徳島城
とくしまじょう



所在地:徳島県徳島市徳島町城内
最終更新日:2022.7.22
<2015.4.19記>
雨上がりの徳島城は緑泥片岩の石垣が濡れて輝いて、建物のなさを補って余りある美しさだったのですが、何しろ足元が滑る滑る(笑)。全体に傾斜があって、何しろ危険きわまりなくて。本丸にあった物騒な由来を持つ祠(なんでも徳島城築城の際、蜂須賀氏た立ち退きを要求したところ拒絶されたために何のかんのと殺されてしまった坊さんの祟りを防ぐための祠なのだとか)を前に、お祈りすることすらためらって立ち去ろうとした瞬間、「ずるっ」と滑って本丸階段を真っ逆さま。危うく二の丸まで「階段落ち」をするところでした。おーこわ。
おかげでこの先、泥まみれのズボンのまま徳島県内の城巡りを済ませ、その格好のまま飛行機で帰る羽目になったのでした。
徳島城の前身となる小さなお城はあったようですが、今の徳島城はその小城を踏襲したところが少しもなさそうなので、蜂須賀氏が新たに築いたものとして記しました。天正13(1585)年の豊臣秀吉による四国征伐の後、阿波一国を与えられた蜂須賀正勝・家政親子が築城し、そのまま明治まで蜂須賀氏のお城として機能し続けたお城です。天下統一がなされる前の天正期に築かれたお城なので近世城郭の中では最古の部類に属し、荒々しい石垣など古風な姿を今に伝えてくれていて、その意味でも大変貴重なお城と言えるでしょう。
蜂須賀氏は江戸時代には徳川氏とも密接な姻戚関係を保ち、25万石の太守に相応しい威容を明治まで保ち続けた格式の高いお城でした。御殿だけでも三の丸のメイン御殿の他に2ヶ所を数えたとか。なお、天守は東二の丸にありました。城下から見えやすい場所に築いたということのようですが、本丸以外の場所に天守を持つお城はそれほど多くないと思います。有名なところでは津和野城くらいでしょうか。正式には御三階櫓だったものも数えれば水戸城とか忍城なんかも該当しますでしょうか。天守台はなく地面にそのまま建てられた三階建ての天守は、明治になって他の建物と一緒に壊されたそうです。
現存する建物はありませんが、荒々しくも精緻に築かれた石垣は圧巻です。平たく割れやすい緑泥片岩の性質を逆手に取った石垣は、山上のものも山下のものもそれぞれお見事。門の石垣に「鏡石」が多用されているのも特徴で、門を通る人に無言の威圧感を与えてくれます。

<2019.3.10記>
100名城スタンプ押し直しの旅で、前回は泥まみれになったので遠慮した庭園(国名勝)にもお邪魔してきました。なるほど。さすがに豪壮な庭園ですね。高低差も大きいので、実際の面積以上に大きく見えるだけでなく、立つ場所によって全く景観が異なり、ひとつの庭園なのに三つも四つもの庭園を見ているような錯覚を覚えます。なお、この日は天気がよかったせいか、本丸までの往復でも全く滑ることはありませんでした。徳島城を訪ねるなら晴れの日に限ります(笑)。

<2022.7.22記>
徳島城の石垣は、ほぼ緑泥石岩一色で埋め尽くされています。もちろん大抵のお城がほぼ同じ岩質の石切場から石を調達しているので、あるお城では安山岩系、あるお城ではチャート、またあるお城では石灰岩といったように、それぞれのお城を特徴づける役割をも果たしているわけですが、緑泥片岩の石垣は石の形から色からなんやかんやと突出したインパクトを醸し出しています。近世城郭で積極的に緑泥片岩を取り入れているのは恐らく和歌山城と徳島城だけだと思うのですが、わけても徳島城は築城時から修築時まで、本当に一貫して緑泥片岩を使い続けました。石垣の積み方やサイズ等がバラエティーに富んでいることで、金沢城と並んで「石垣のデパート」とも称される和歌山城は、初期段階こそ緑泥片岩ですが、どこかの時代からは緑泥片岩の使用を止めています。その点、徳島城は首尾一貫して緑泥片岩。浮気、なし!(笑)
この潔さこそが徳島城の醍醐味であり、通をも唸らせる石垣の城としてその名を馳せているわけですね。鷲の門周辺の石垣は、恐らく徳島城でしか見ることのできない緑泥石岩の切石積み。サイズがまちまちなのに、組み合わせることによって見事に一枚の壁と化している石垣は、地味ではありますが全国で恐らくここでしか見ることができないでしょう。徳島城は、緑泥片岩の石垣をとことんまで楽しむためのお城・・・だと思います。
Data
ランク 国史跡、国名勝、100名城、100選、百選、こんな城、徳島県1位
門(復元)、石垣、堀
創築:天正13(1585)年、蜂須賀家政
蜂須賀氏(徳島藩、250,000石)
徳島駅の真裏(北側)に聳える山が徳島城ですので、迷いようのない場所です。ただ車で訪ねる場合はちょっとやっかいで、広大な城域ながら駐車場は市街から一度お城をやり過ごした東北隅(徳島城東駐車場)しかありません。ここからだと博物館・庭園を経て城内を一周するためにはかなり大回りになりますので、時間には余裕を持っておきましょう。


徳島城フォトギャラリー





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