八幡山城
はちまんやまじょう



所在地:滋賀県近江八幡市安土町宮内町
最終更新日:2020.5.6

天正13(1585)年、豊臣秀次がこの地に42万石をもって封じられ、豪華絢爛なお城を作ったのが始まりです。ご乱行を咎められ、高野山に蟄居の末、切腹を命じられた豊臣秀次に対する評価は様々で、総じて暗愚な暴君として描かれることの多い人物ではありますが、この近江八幡にあっては八幡堀の開削や商業の奨励等の施策が世の人々に受け入れられ、近江商人の活躍の源を作った名君として伝えられています。ちなみに私自身は秀次を「薄幸の貴人」と評価しています。
お城は山上の本丸、二の丸等の他、八幡山を巡る八幡堀が、水運と防御を両立させた見事な施設として現代に伝わっていますが、土地の古老に伝わった「山麓の石垣」が2001年になって本格的に調査され、夥しい金箔瓦とともに、巨大な礎石建造物が発掘されました。現在この場所は、豊臣秀次の居館跡であったと断定されるに至り、本格整備の最中にあります。秀次亡き後も商人の町として栄えた町、近江八幡は、八幡堀と城下町の風情に加え、いずれは秀次の居館跡がもっともっと脚光を浴びることでしょう。

<2013.1.26記>
2012年に近江のお城を訪ねた際、どーしても訪ねたかったのがこのお城。出張などで新幹線で通過する際にも、いつもロープウェイのあるこの山を遠目に見ながら、いつか、いつかと思って過ごしてきました。そこで、近江に歩を進めた際にはまずまっすぐ近江八幡に向かい、駅前で自転車を借りて、まっしぐらに八幡山城を目指しました。
豊臣秀次像のある八幡公園を通り過ぎ、竹藪の奥、整備も半分といったエリアに出ると、藪の中からとんでもなく立派な石垣が目に飛び込んできました。これほどの石垣群を持ちながら、ここが秀次の居館跡だということが再発見されれから、まだほんの10年ほどしか経っていないというのが驚きです。お城って、これからもまだまだ新しい発見があるんでしょうね。
藪の中の石垣は、実に丁寧に作られています。いわゆる打込みハギで、大小の石をそこそこの隙間を保ちながら積み上げている石垣が一番美しい・・・と私はいつも思っているのですが、ここの石垣はその基準で考えれば、もっとも美しい部類に属する石垣です。苔むした石が織りなす、扇型の曲線。石垣好きな方にはぜひ一度見て頂きたいと思う、美しい石垣です。
ロープウェイに乗り、山上に行ってみてまたびっくり。瑞龍寺として再利用されている山上のお城は、存分に山城の趣を残していて、格調高い石垣を随所に見ることができます。残雪の中、訪れる人もない(ロープウェイ、こんなんで営業は大丈夫なのかと思うくらい)山中で一人、薄幸の貴人・豊臣秀次の夢と無念を思ったのも一瞬、次のロープウェイに間に合わせるため、また慌ただしく山を下りたのでありました。

<2020.5.6記>
二度目の近江八幡もまた1月となりました。しかも正月2日。近江八幡の「八幡」って何だったっけ?と考えることもせずに三が日に訪れた私が阿呆でした(笑)。近江八幡の八幡は八幡神社の八幡で、近江八幡城の麓には八幡神社が鎮座しています。当たり前ですよね。おかげで初詣の人波にもまれる羽目となりました。近江八幡って、静かな町じゃなかったっけ・・・?
そもそもこの旅行、三が日でも開いているお城を目指した行程だったのですが、考えてみれば「開いている」というからには開いているだけの理由があって、「開いている」は「空いている」ではないんですよね。いやはや迂闊でした。
でもロープウェイは(さすがに前回ほどではなかったにしても)相変わらずの閑散ぶり。前回は「生身のガイドさん」が同乗されていたのですが(客は私だけなのに)、今回は「音声ガイド」になっていました。合理化されちゃったんですね。そうだろうな、仕方ないよな、とは思いつつも、なんとなく味気なくなっちゃいましたね。
前回と同じく、山の上に立つとどうしても「次のロープウェイで降りたくなる」のが性分らしく、前回と同じくばたばたと山上を歩き回りました。山上の瑞龍寺は閉まっていたので、この時は石垣を下から一巡り。お城として整備されているわけではないので、石垣を見せることをそれほど意識されていないのでしょう。そのため、植物の間から垣間見える石垣がまた廃城の趣を醸し出していて素敵だな、と思いました(注:2020年になって山上の木々が伐り払われ、城下町からも石垣が見えるようになったとの情報があります)。
そして何より、ここから眺める夕暮れの風景は実に素晴らしいですね。京都滞在が多かったはずの秀次が山上まで足を運ぶ機会はそうそうなかったと思いますが、この景色を眺めていたら、鬱屈した秀次の心も少しは癒されたんじゃないかな、と考えさせられてしまいます。
Data
ランク 国史跡、続100名城、滋賀県6位
石垣、堀
創築:天正13(1585)年、豊臣秀次
豊臣氏(420,000石)
JR近江八幡駅から3kmほど、歩いて30分ちょっとかかりますので、レンタサイクルがお勧めです。車なら八幡山ロープウェイの駐車場が便利だと思います(三が日以外は)。
続100名城スタンプは八幡山ロープウェイの山頂駅にあります。

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