府内城
ふないじょう


所在地:大分県大分市荷揚町
最終更新日:2019.6.3

<2011.8.27記>
府内といえば大友宗麟で、現に大分駅前にも立派な大友宗麟像が立っているのですが、現在の府内城は大友氏と直接の関係はなく、大友氏改易後に豊臣秀吉の臣・福原直高が大友氏館とは全然異なる場所に新築したのが府内城です。荷揚城とも呼ばれるこのお城は、築城当時は海に面していました。そのため、その縄張りにはちょっとした特徴があります。海側(東北側)の守りを固めるため、車道一車線分くらいの、極めて細長い「帯曲輪」を配置しているのですが、これだけ細長い曲輪を構えているのはちょっと珍しいですね。細長い帯曲輪の実例としては姫路城や江戸城など、特に大型のお城で見られないわけでもないのですが、府内城の規模だとやっぱり珍しいのではないでしょうか。
大分県内の大名は、豊臣恩顧の大名たちが大友氏改易後に配された後、意外なくらいそのまま江戸時代を通じて大名で居続けているのですが、この府内城はその中でもまた例外的に、結構多くの大名が入れ替わり支配しています。それもよく見ると移封ではなく改易による交替です。今のお城を完成させた竹中重利(竹中半兵衛のいとこ)の息子、竹中重義は、長崎奉行時代の不正を咎められ改易、日根野氏は無嗣改易。その跡を受けた松平(大給)氏になって漸く安定し、2万石の小さな藩のお城として明治を迎えます。
現在、似たような形の櫓が5棟ほど建っていますが、現存しているのは「人質櫓」と「宗門櫓」で、あとのものは大手門を含め、戦後の建築です。復元のものもよくできているので、本当にどれが現存でどれが再建なのか、よーく見るまでわかりません。

ある年、珍しく講演のお仕事を請け負い、日帰りで大分出張&講演という「苦行」に臨んだことがありました。「大分空港まで迎えに行きますよ」との申し出を断り、バスで大分市内へと入りました(あとから思えば、あの時バスでなく「ホバークラフト」を選んでいたら、今は運行されていない貴重なホバークラフトを体験できたのですが・・・)。大分駅でバスを降り、講演会場に行く道すがら立ち寄ったのが府内城。目の前に現れた府内城は全体に小さくて、なんだかミニチュアを見ているような印象でした。それにしても、石垣も、堀も、櫓も、門もあるのに、どういうわけか脇役、というか背景にしか見えなかったのは、県庁所在地の真ん中にあるお城の宿命なのでしょうか。市役所やら公共施設やら駐車場やらに場所を取られ、石垣の方が「邪魔でごめんね」と脇に引っ込んでいるような。同じ県庁所在地にあるお城という意味では、初めて見たときの佐賀城本丸よりはまだましだったかもしれませんが(あれはほんとにひどかった・・・今では綺麗になりましたけれども)。
この頃はちょうど廊下橋が出来た頃でしたが、櫓や門ではなく「橋」を復元するあたりに大分市の真摯な姿勢が伝わってくる気がしました。ちなみに太鼓橋から見た人質櫓とその手前の堀は、実に絵になります。私が訪ねたのは晩秋でしたから、銀杏の黄色がとっても綺麗でした。府内城の滞在時間、約20分。講演の時間が迫ってきました。出張ついでの府内城探索はこれにて終了。

そうそう。大分出身の同僚・・・といっても定年間近のおじさんでしたが、その方は常々「府内城は町の誇りです。なんてったって大友宗麟ですから」といった趣旨の発言をされていました。彼にとどまらず、多くの方の頭の中ではやっぱり「府内城=大友宗麟」という構図が固まってしまっているのでしょうね。府内城とともに大友氏館の発掘整備が進めば、こうした誤解も解けていくのでしょうか。大分市の今後の頑張りに期待します。

<2016.3.24、2019.6.3記>
上記の講演から数年が経過し、改めて府内城を訪ねる機会を得ました。講演に使われた市の施設は既に城内になく、だだっぴろい広場になっていました。勢いよく城内まで車で入ってみたものの、駐車場そのものが閉鎖されており、城内で思わず立往生(笑)。府内城もここから数年で、大きくその姿を変えるのかもしれません。一気にお城らしくなるのではないでしょうか。
それから更に2年ほどが経過した2018年、三たび府内城を訪ねました。城内の建物はすっかりなくなっていましたが、風景自体はあまり変わっていなかったような。城内に現出した広大なスぺース、今後どのように活用していくのでしょう。

Data
ランク 100名城、100選、こんな城、大分県6位
櫓(現存、再建)、門(再建)、石垣、堀
創築:慶長2(1597)年、福原直高、改築:慶長6(1601)年、竹中直利
福原氏、竹中氏、日根野氏、松平(大給)氏、(府内藩、20000石)
大分駅からでも十分に歩ける距離ですし、市役所がすぐ隣にあるので交通機関は万全でしょう。当面は城内の広大なスペースが臨時駐車場となっていますが、いずれどこかにきちんとした駐車場が設けらえることでしょう。なお、100名城のスタンプは大手門に備え付けられています。


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