松本城
まつもとじょう

所在地:長野県松本市丸の内
最終更新日:2023.1.30

信濃守護の一支城として築かれましたが、武田氏による小笠原氏追放後は、小笠原氏の本城であった林城を廃し、平地のこの城を中心に据え、城下の建設も行われたようです。現在の城郭は小田原の役の直後、石川数正が入城したことを機に整備がなされています。
現在残る美しい天守は、五層天守としては日本最古のもので、文句なしの国宝です。天守台が不規則なため、屋根の収まりには相当苦労しているようで、よーく見ると屋根の向きや軒の出方が階によって異なったり、よーく見ると五層目の方が四層目より大きかったりと、不自然な箇所が多く見られます。それが逆に、この天守独特の美しさを際立たせているのだと思いますが。ちなみにこの建物はひとつに見えて、大天守、小天守、付櫓と月見櫓の4棟からなっており、特に月見櫓には朱塗りの高欄が巡らされる等、大変風流な建築となっています。
天守が傾いていた話も有名です。江戸末期の農民一揆「加助騒動」で処刑された加助の怨念が天守を傾かせたとの説もありますが、実際のところは湿地帯に築かれた石垣が年月を経て歪み、その歪みが建物に伝わって傾いたというのが真相のようです。明らかに傾いたこの天守を、私財を投げ打ってでも保存しようと運動した、当時の篤志家の心意気には本当に感謝です。
天守ばかりに眼が行きがちな松本城ですが、実は二の丸に「金蔵」がひっそりと残っていたり、外堀や外堀土塁が部分的に残っていたり、意外と見どころの多いお城でもあります。

<2001.12.11記>
およそ10年ぶりにお城巡りを再開した時には、まさか1年のうちに2つも「国宝」を制覇できるなんて思ってもみませんでした。
さすがにこのお城はいつ来ても混んでいます。大人になって眺めてみると、実に渋くていいお城です。子供のころは華麗なる姫路城などに比べるとあまりに地味で、いまひとつぱっとしないイメージでしたが、青空に黒壁がくっきりと映えて、この日はなんとも美しく見えました。
このお城も前回より建物が増えていました。前回は再建間もなくて、なんとなく浮いて見えた黒門もすっかり落ち着いた佇まいを見せ、国宝の天守建造物群をしっかり盛り立てているように見えました。このお城、お堀に手すりがついていません。その昔、とある歌謡番組でここから生中継した時、人込みに押されて真冬のお堀に落っこちた女の人がいたような気がしますが、それでも今でも手すりをつけないのはなかなか強固なポリシーだと思います。

<2010.2.13記>
10年近く前のこういう記載を見るにつけ、断続的に城をやり続けてきたことを実感します。100名城スタンプなるものができたこともあり、必ず一度は再訪したいと思っているのですが、なかなか機会に恵まれません。いろんな方に教えて頂いて、外堀の遺構が結構残っていることなどもわかってきているので、いつかは改めてじっくり訪ねてみたいのですが。

<2011.9.11記>
この夏、改めて松本城を訪ねました。松本在住の方に案内頂き、断続的に残る総構の土塁なども紹介して頂きました。天守ばかりが注目される松本城ですが、よく探せば、松本市内のいたるところに松本城の痕跡が色濃く残っていることを感じました。炎天下、外堀の中に掘られた井戸の水が冷たくて気持ちよかったこと。久々の松本訪問は、とっても楽しい思い出になりました。

<2012.10.25記>
松本城の大手門界隈を「城門のあった場所」であることがわかるように整備する計画が進んでいたようで、新聞報道によれば、大手門跡の石垣の基礎部分が検出できたようです。これで大手門の枡形の境界線が明確になったわけで、整備保存に向けて一歩前進できた感じです。

<2023.1.30記>
2022年の秋、久しぶりに松本城を訪ねました。朝一番だったせいか、今やどこぞのアトラクションの感もあるとされる天守待ちの長蛇の列もなく、待ち時間ゼロで天守に入れたのは有難い限りでした。松本城天守には開館時間中ずっと多くの人が詰めかけているわけですが、床はほとんどみしみししないんですよね。もちろん解体修理時に基礎部分には相応の補強がなされているわけですが、躯体は旧状のままのはず。本当に丈夫な建物だなあと思います。
そんな松本城天守の秋の風物詩と言えば、「天守の塗り直し」。今ではすっかり有名になりましたが、松本城天守の黒さは黒漆を毎年塗り直していることによって保たれています。すごいですよね。本物の漆塗りです。ちなみに月見櫓の赤い欄干も、朱漆です。ホンモノの漆が、プロの漆工職人さんの手によって塗られているんです。松本城天守群全体がひとつの大きな「漆器」と言ってよく、故に筆者はかねて松本城天守を勝手に「日本一の漆器」と呼んでいます(笑)。
秋に松本城を訪ねればまず間違いなく漆塗りの現場を見ることができます。なんで秋なのかというと、空気が乾燥していてかつ日差しも強いという、漆を乾かすのに必要となる条件がもっとも整う季節だからなのだとか。なーるほど。一部に足場が組まれて写真は撮りにくくなりますが、それはそれで貴重な松本城の姿です。敢えて漆塗りの現場を見に行くというのも通ならではの訪城方法かもしれませんね。松本城天守の漆塗り替えについては、実際に施工されている碇屋漆器店さんのホームページにも写真付きの説明がありますので、よろしかったらそちらもご覧ください。
Data
ランク 100名城、100選、百選、こんな城、長野県1位
天守(国宝)、蔵(現存)、門(再建)、石垣、土塁、堀
創築:永正元(1504)年、小笠原氏 改築:天正18(1590)年、石川数正
石川氏、小笠原氏、松平(戸田)氏、松平(越前)氏、堀田氏、水野氏、松平(戸田)氏(松本藩、60000石)
松本市街のど真ん中にあるのでまず迷うことはないでしょう。周辺にも複数の駐車場があります。駅からも十分に徒歩圏。

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