小田原城
おだわらじょう



所在地:神奈川県小田原市城内
最終更新日:2023.10.24
15世紀にこの地に根付いた大森氏が築いたのが、歴史上に現れる小田原城の初見です。大森氏は藤頼の代に伊豆の伊勢宗瑞(北条早雲)の攻撃を受けて歴史上から姿を消し、以降およそ100年に亘り、北条5代の本城として大いに栄えました。
北条氏康の代には上杉謙信と武田信玄が相次いでこのお城を囲みますが、2度とも撃退しています。その経験を踏まえ、小田原城は強烈な防御力を持つ城郭として、ますます磨きがかけられていきます。その最たるものが「総構え」。総構えの周囲は9kmにも及び、豊臣氏の大坂城の総構えをも凌ぐ、日本一の規模を誇りました。大きいだけではなく、総構えの土塁の高さと堀の深さも並大抵のものではなく、まさしく難攻不落の名城でした。
そんな天下の名城も、豊臣秀吉が擁した桁外れの大軍の前に、3ヶ月余の籠城の末、ついに開城します。小田原の役の詳細は他稿に譲るとして、後北条氏なき後の小田原城は、徳川氏の支配の下、大久保忠世によって「普通の城郭」へと規模が縮小され、現在の姿になりました。
ただそれでも関東の他のお城と違うのは、本丸、二の丸が総石垣で作られたこと。箱根に隣接し、関東への入口に位置するという軍事上の重要性から、江戸城に次ぐ規模の石垣が投入された点で、やはり関東では特筆すべきお城であり続けました。
残念ながらこの地は大地震が多く、最も新しいところでは関東大震災により、本丸の石垣がほぼ壊滅しました。この時崩落した石垣はそのままの形で残されており、その意味でも極めて異彩を放つお城です。
天守は宝永3(1706)年に再建されましたが、明治になって解体されました。現在の天守はこの時のものを外観復元しています。城内には本丸の入口である常盤木門の他、最近になって発掘調査を踏まえて完全復元された銅(あかがね)門や馬出門などが、かつての威容を今に伝えています。

更なる詳しい解説は、特集「ふたつの小田原城」をご覧ください。

<2011.11.3記>
中3の夏、今風に言えば「ダブルデート」の形で、同級生たちと小田原城に行きました。静岡から小田原まで電車で行って、小田原城を見たらすぐに箱根登山鉄道に乗って、強羅からケーブルカーとロープウェイで大涌谷に行って、黒玉子を食べて帰ってくるという、日帰りの旅。箱根の山と下界とのあまりの温度差にやられ、私はそのあとあっけなく風邪に倒れ、夏休み最後の一週間をうんうん唸って過ごすことになるのですが・・・
それはさておき、本丸で同級生が一言。
「なあ、あの天守は鉄筋なんだろ。このお城には昔からのもの(建物)はなんかないのか?」
「残念ながらないなあ。ま、ここは本丸だから、今立ってる足の下も、掘りゃなんか出てくるかもしれないがな。」
「『掘りゃなんか出てくる』か。そりゃいいな(笑)」
その同級生は、「掘りゃなんか出てくる」のフレーズがいたく気に入ったらしく、その後10年以上もの間、私に会うたびに、
「なあ、ここも掘りゃなんか出てくるのか?(笑)」
と尋ねたものでした。

お城をしっかりやるようになってから、小田原城がだんだんとんでもないお城であることに気付きました。もちろん、今の小田原城がかつての小田原城のごく一部であることは、小学生の頃から知識としてはありました。が、近年、小田原の役当時の最外郭であった「総構」の調査、整備が進み、以前よりずっと見学がしやすくなりました。と同時に、意外にもかなり濃厚な遺構が、山や畑の中に残っていることを知りました。2011年の3月、そうした総構えを巡る見学ツアーに参加し、5時間以上も歩き回って、どっぷりとその総構えを拝みました。それでも、私が見たのは総構のほんの数分の一。小田原城を初めて訪ねた時から、はや30年。でも、小田原城はまだまだこれから調査、整備が進むと思いますので、まだまだこれから楽しめそうな気がしています。

<2018.5.19記>
小田原市はどんどんこのお城の整備を進めています。2012年には三の丸外郭新堀界隈が一般公開され、天守周辺の材木が伐採されて眺望が開けた他、本丸の斜面からかつての銅門に向かう石段の跡が確認され、更に御用米曲輪からは築地塀やら庭園やら礎石建造物やら出てきて、もしかしたら後北条氏の時代に遡る重要な建築物なのではないかとの話まで出てきています。小田原城、まだまだ発見が続きそうです。

Data
ランク 国史跡、100名城、100選、百選、こんな城、神奈川県1位
天守(復元)、櫓(復元)、門(復元)、石垣、土塁、堀
創築:応永24(1417)年、大森頼春、改築:天正19(1591)年、大久保忠世
大森氏、上杉氏、後北条氏、大久保氏、阿部氏、稲葉氏、大久保氏(小田原藩、113000石)
小田原駅の東口から南(駅を出て右)に向かえば、いやでも小田原城に辿り着けます。車なら小田原駅の南側か、小田原城の南側(二宮神社の前)に時間貸駐車場があります。ただどちらも街中ということもあり、そもそも小田原城がなかなかの観光名所であるということもあり、結構混んでいますのでご注意のほど。

小田原城フォトギャラリー





inserted by FC2 system