岩屋城
いわやじょう



所在地:福岡県太宰府市観世音寺
最終更新日:2023.4.9

   
<2011.10.30記>
福岡城から始まった「城見物・九州縦断一泊二日の旅」でしたが、大野城の石垣見学のために結構山を登ってしまったので、早くも足が棒になってしまいました。道路脇の石段をほんの1分も上がればこの岩屋城の本丸に辿り着けるのですが、これだけでもうひいひい・・・
ただ、そんなひいひい感も何も、「嗚呼壮烈 岩屋城址」の石碑を見ただけで、すべてが吹き飛んでしまいます。この小さな本丸で、高橋紹運はじめ700人余りの兵だけで、何万人もの島津氏の大軍を迎え撃ち、堂々と玉砕して果てたという、戦国史上稀に見る攻防戦。その歴史的舞台に自分が立っているというそれだけで、震えが止まらなくなりそうでした。油断していると、涙が出そうなくらい(笑)。
大学卒業時の卒業旅行で、太宰府天満宮を訪れたことがあります。岩屋城からはその太宰府の風景を一望することができます。思えば大野城も、その南端にある岩屋城も太宰府天満宮からすぐだったのに、その当時は訪ねようとさえしませんでした。思えば、なんと勿体ないことでしょう。あの頃一度訪ねてあれば、その時と今とを重ね合わせて、もっともっと深い感慨に浸ることができたのだろうに・・・
岩屋城といえば岩屋城の戦いがあまりにも有名です。この地にお城を築いたのは、高橋鑑種。頑固一徹の律儀者であった高橋鑑種は、その律義さが災いして城を追われ、代わりに大友氏の重臣であった吉弘鎮種が高橋氏の名跡を受け継いで、岩屋城の守備に入ります。この人こそが後の高橋紹運。立花宗茂の実の父でもあります。立花道雪、立花宗茂、それに高橋紹運と、この地にはどうしてかくも多くの名将が生まれたのでしょう。
岩屋城は大友氏勢力の最前線として、また博多防衛の最前線としても、極めて重要な位置を持つに至ります。時は天正14(1586)年。豊臣秀吉による天下統一が先か、島津氏による九州統一が先か・・・。このいずれが先になるかによって、後の天下の趨勢も大きく違ったものになったことでしょう。その島津氏の九州統一を阻み、大友氏が頼みとする豊臣氏の軍勢を九州に迎え入れるためには、ほんの二週間ほどの日数稼ぎが必要でした。高橋紹運はその点を十分に理解した上で、期日通りに二週間、700余名の寡兵をもって、2万余の島津の軍勢を足止めにしたのでした。
岩屋城の本丸周辺は、いくつかの腰曲輪と堀切が残るのみですが、高橋紹運がその名を賭けて戦い切った場所として、「嗚呼壮烈 岩屋城址」の石碑とともに、激戦の跡を今に伝えています。

<2023.4.8記>
天正14(1586)年の岩屋城の戦いは、戦国史全体を見回してみても稀有な戦いだったと言えるでしょう。高橋紹運率いる総勢763名の城兵全てが討死するという壮絶な戦いは、当時の世界観から見ても稀有なものだったのではないでしょうか。いかに戦国の世であったとしても城に籠るということはどこかで武士の名目を立てるといった要素が含まれており、「精一杯戦ったのであとは許してくれ。少なくとも城兵には罪はない。」的な決着を見ることが多いように思われます。世に名高い備中高松城の水攻めしかり、鳥取城の干し殺ししかり。玉砕したと捉えられがちな戦いでも、案外多くの将兵が落ち延びていたのが実態だと思います(あ、高天神城は玉砕かな・・)。そうした中で岩屋城の戦いは、763名全員が命を落としたと伝えられてきました。763名という人数には諸説あるものの、この戦いの死者を763名という「切りの悪い数字」で示した記録者は、そこにいた全員が命を落としたという事実をよりリアルに伝えたかったのだろうと推察しています。この記録者しかり、「嗚呼壮烈」の碑を立てずにはいられなかった石碑製作関係者もしかり。岩屋城の落城物語には人の心を激しく揺さぶる何かがあるのでしょう。
岩屋城の主郭に残る櫓台状の土塁の上で、お城くんが「石が多いですね」と呟きました。削り残しと思われる主郭土塁には拳大から人頭大サイズの石が多く混ざっています。これが石塁を構成したものなのか、はたまた石礫を構成したものなのかはわかりませんでしたが、何らかの目的をもって土塁上または土塁中に盛り込まれたものであることは間違いないのでしょう。石礫なのだとしたら、最後まで戦い続けた城兵たちが使い遺した「最後の弾薬」なのかもしれませんね。
ランク -
土塁、堀
創築:天文年間(1532〜1554)、高橋鑑種
高橋氏、立花氏
アクセス   大宰府から大野城方面に、あるいは大野城から大宰府方面に車を進めれば、否応なく岩屋城をかすめることとなります(正確には城内を通過します)。道路沿いに岩屋城への登り口がありますが、路駐スペースが狭いので停車の際にはご注意ください。


岩屋城フォトギャラリー





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